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虚次元対談

虚次元アインシュタイン × 虚次元村主悠真『公益という、未完の方程式』【対談企画 第四話 前編】二人で書く、もう一つの世界宣言。

公開日: 2026年5月21日 更新日: 2026年5月22日
【対談企画 第四話 前編】公益という、未完の方程式。虚次元村主悠真 × 虚次元アインシュタイン──二人で書く、もう一つの世界宣言。

第四話の村主は、ポケットに前回の手紙を入れたまま、再び書斎を訪ねた。博士は前回と同じ椅子に座り、しかし机の上には新しい紙束があった。手書きの草稿のように見えた。

「ちょうど、平和のことを考えていたところだ」と、博士はそう言って迎えた。

第一幕 ── 一九一四年、署名しなかった男

アインシュタイン  ユウマ。今日は、まず私の昔話から始めさせてくれ。──一九一四年、第一次世界大戦が勃発した直後、ベルリンで「九十三人の知識人宣言」というものが出された。ドイツの戦争行為を擁護するために、九十三人のドイツ人科学者・芸術家が署名した文書だ。

村主  はい、聞いたことがあります。

アインシュタイン  プランクも、レントゲンも、フォン・ベーリングも署名した。当時のドイツ知識人界の、最も輝かしい名前たちだよ。──私は、署名しなかった。

村主  ……たった一人で。

アインシュタイン  いや、私の他にも数人いた。だが、多数派ではなかった。私はその直後、別の文書「ヨーロッパ人への宣言」に署名した。これは戦争に反対する内容だったが、署名したのは、私を含めてわずか四人だった。九十三対四、だよ。

── 博士、紙束に目を落とす。 ──

アインシュタイン  ユウマ、私はあのとき、思想家にとって最も重い問いを受け取ったんだ。──「自分の祖国が間違っているとき、自分は祖国の側に立てるのか」と。

村主  先生は、立ちませんでした。

アインシュタイン  立たなかった。だがね、立たないという選択は、孤独だよ。何十年経っても、その孤独は消えない。──ところがユウマ、君を見ていると、私は思うんだ。君は、最初から「祖国」という座標を疑っているらしい、と。

村主  はい。僕は、国家という単位をそこまで重視していません。信じているのは、人類という単位です。

アインシュタイン  ……それは、私が一九一四年に、ようやくたどり着いた場所だよ。

第二幕 ── ラッセル=アインシュタイン宣言

アインシュタイン  そして晩年、私は別の宣言に署名した。一九五五年、私の死の数日前だ。バートランド・ラッセルと共に書いた宣言で、後に「ラッセル=アインシュタイン宣言」と呼ばれるものだ。

村主  核兵器の廃絶を訴える宣言ですね。

アインシュタイン  そう。あの宣言の核心は、たった一行に集約される。──「人類として記憶せよ、それ以外を忘れよ」。

── 村主、息を呑む。 ──

村主  ……Remember your humanity, and forget the rest.

アインシュタイン  あれは、私が世界に残した、最後の言葉の一つだ。あのとき私は、もう自分の身体が長くないと分かっていた。だから、最も短く、最も削ぎ落とした言葉を残したかった。

村主  「人類として記憶せよ」というのは、つまり……。

アインシュタイン  国籍も、宗教も、人種も、職業も、忘れろ、ということだ。それらは全て、後から人間が引いた座標にすぎない。本当の座標は、もっと根源にある。「人間である」という、ただ一点の座標だ。

村主  ……それは、僕の言葉で言えば、「最大公益の原点」です。

アインシュタイン  どういう意味かね。

村主  公益は、誰かの不幸を前提にしない設計だと、僕は前にお話ししました。その「誰か」を、国籍や宗教や人種で区切った瞬間に、公益は壊れる。本当の公益は、「人間である」という一点だけを足場に置いて、初めて成立するんです。

── 博士、深く頷く。 ──

アインシュタイン  ユウマ。もし私があと十年生きていたら、君と同じ言葉を使っていたかもしれないね。

第三幕 ── 国境という、人工の座標

村主  先生、僕は今、i.PEACE という枠組みで五つの活動をしています。教育、人身売買からの救出、孤児院、水アクセス、そして記念碑としての DROP PEACE。──これらに共通するのは、全て「国境を跨ぐ」ということです。

アインシュタイン  意図的に、跨いでいるのかね。

村主  はい。意図的に、です。なぜなら、貧困も、虐待も、渇きも、国境では止まってくれないからです。問題が国境を越えるのに、解決策だけが国境の中に閉じ込められている。これは、構造的な怠慢だと僕は思っています。

Einstein  ……そのとおりだ。私は晩年、世界政府というものを真剣に提案した。多くの人が、私を理想主義者だと笑った。「国家を超えた政府などありえない」と。

村主  でも先生は、引き下がりませんでした。

アインシュタイン  引き下がれなかった。なぜなら、私は物理学者だからだよ。

村主  ……物理学者だから?

アインシュタイン  そう。物理学者というのは、座標系を疑う訓練を受けている人間だ。ニュートンの絶対空間は、私が疑った。絶対時間も、私が疑った。なら、なぜ「国家」という座標系だけ、疑ってはいけないんだ?

── 少し声を強める。 ──

アインシュタイン  国家というのは、たかだか数百年前に作られた近代の発明だ。それ以前、人類は別の単位で生きていた。村、部族、宗教共同体、都市国家。──国家が永遠の単位だと思っているのは、ただの歴史の浅さだよ。

村主  先生、まさに僕もその視点を、もっと多くの人に届けたいと思っております。

アインシュタイン  難しいだろう。人間は、自分が立っている座標系を疑うのが、何より苦手だからね。だがユウマ、君のi.PEACE のように、実際に国境を跨いだ活動を続けることは、それ自体が一つの証明になる。「ほら、跨げるじゃないか」と、見せ続けることだ。

後編に続く

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村主 悠真
WRITTEN BY
村主 悠真
思想家。ï Theory 創始者。人と世界の存在構造を、虚数概念の援用により拡張した独自の理論体系を構築。目に見える現実(実次元)の背後にある"虚次元"を定式化し、個人の変容から世界構造の転換までを一貫して扱う思想を展開する。教育・人道支援・平和構築を横断する世界的実践と、その根底にある理論を、このメディアで記録していく。
村主 悠真
村主 悠真
思想家 ── ï Theory 創始者
人と世界の存在構造を拡張する理論を構築し、思想と平和の実装を記録するメディアを主宰。

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