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虚次元対談

虚次元レオナルド・ダ・ヴィンチ × 虚次元村主悠真『水について』【対談企画 第三話 後編】かたちを作る力の話

公開日: 2026年6月22日 更新日: 2026年6月21日
虚次元レオナルド・ダ・ヴィンチ × 虚次元村主悠真『水について』【対談企画 第三話 後編】かたちを作る力の話

三度目の来訪は、朝だった。昨日の雨が嘘のように晴れていた。村主が階段を上がると、老人はすでに机の前に座っていた。机の上には、新しい紙束と、それから──ガラスの水差しが一つ、置かれていた。

「今日は、水の話をすると約束したね」と、レオナルド・ダ・ヴィンチは言った。

前編はこちら

第三幕 ── 水を運ぶということ

Leonardo  ところでユウマ。君は、自分の時代で、水をめぐる仕事もしていると聞いたが。

村主  はい。AQUiA(アクイア)という名前のプロジェクトを動かしています。世界には今も、安全な水にたどり着けない人たちが約20億人もいます。井戸のない村、汚染された川のそばで暮らす子どもたち、病気の九割が水が原因だという地域。──そういう場所に、水が届くための仕組みを設計しています。

Leonardo  ……九割、か。

村主  はい。薬を届けるより、学校を建てるより、まず水が届かないと、ほかのすべてが成り立ちません。僕は、公益という概念を考えるとき、いつも水のことを思い出します。

Leonardo  水と、公益を。

村主  はい。水には、いくつかの性質があります。低い方に向かって流れる。通り道に触れるすべてを潤す。誰かを選ばない。見返りを要求しない。──僕にとっての公益は、水のかたちをしています。誰かを選ばずに、低い方から順に、静かに満たしてゆくもの。マエストロが「自然の乗り物」と呼んだものは、僕には「公益の原型」に見えます。

Leonardo  そうなると、君の仕事は、絵を描くことと、そう変わらないな。

村主  はい。僕は、公益という絵の一部を、水で描いているのだと思います。

── レオナルド、ゆっくりと頷く。 ──

第四幕 ── 乗り物と、乗る人

Leonardo  ユウマ。最後に一つ、若い君に贈っておきたい言葉がある。

村主  ……はい。

Leonardo  水は、自然の乗り物だと、私は言った。だが、乗り物は、それだけでは動き出さない。乗る人がいて初めて、乗り物は意味を持つ。──君は、水という乗り物に、人を乗せる仕事をしているんだ。

村主  ……乗せる、仕事。

Leonardo  そうだよ。水を届けるということは、人を乗せるということだ。その水の流れの向こうには、学校がある。家族がある。まだ生まれていない子どもがいる。君は水を届けているのではなく、水の上に、これからの人類を乗せているんだよ。

村主  ありがとうございます。その目線で自分のことも水のことも捉えたことはなかったので、その言葉を体の奥で受け止めました。

Leonardo  受け取ってくれて、嬉しいよ。これは、私が水から学んだ、たった一つのまとめかもしれない。

エピローグ ── レオナルド・ダ・ヴィンチ工房を出るとき

その日、対談は短かった。水の話は、長く話すものではない、と老人は言った。「水は、言葉を使わずに教えるものだからね」。

村主は、水差しをもう一度だけ見つめて、立ち上がった。階段を降りるとき、振り返ると、老人はすでに机の前で、新しい素描を始めていた。背中越しに、短い声だけが飛んできた。

「ユウマ。また来たまえ。次は、まだ決めていないんだ。君が、何か持ってきてくれ」

村主は頷いて、工房を出た。ロワールの朝の光が、石畳の上を、ゆっくり動いていた。 

── 編集後記

視線について、飛ぶ機械について、水について。──五百年前の男レオナルド・ダ・ヴィンチと、五百年後の男が交わした三度の対話は、振り返ってみれば、たった一つのことを言っていた。世界の奥には、かたちを作ろうとしている力がある。

その力に、どれだけ長く、どれだけ正直に、視線を合わせ続けられるか。

それが、人間にとって実は重要な責務であるということ。

構成・文・編集 ── 村主

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村主 悠真
WRITTEN BY
村主 悠真
思想家。ï Theory 創始者。人と世界の存在構造を、虚数概念の援用により拡張した独自の理論体系を構築。目に見える現実(実次元)の背後にある"虚次元"を定式化し、個人の変容から世界構造の転換までを一貫して扱う思想を展開する。教育・人道支援・平和構築を横断する世界的実践と、その根底にある理論を、このメディアで記録していく。
村主 悠真
村主 悠真
思想家 ── ï Theory 創始者
人と世界の存在構造を拡張する理論を構築し、思想と平和の実装を記録するメディアを主宰。

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