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論文

虚数とは何か──「存在しない数」が、世界の見方を変えるまで【実数主義】

公開日: 2026年6月28日 更新日: 2026年6月24日
虚数とは何か──「存在しない数」が、世界の見方を変えるまで

中学や高校で「二乗するとマイナスになる数」と一度は習う。けれど、そんな数が現実のどこにあるのか分からないまま、多くの人が通り過ぎていく。虚数(imaginary number)──名前からして「想像上の」数。だが、この数は架空の作り話ではない。むしろ、私たちが「現実」と呼んでいるものの見方そのものを、静かに広げてくれる。

そもそも虚数とは──二乗して1になる数

ふつうの数(実数)は、二乗すれば必ず0以上になる。2×2=4、(−3)×(−3)=9。どうやってもマイナスにはならない。ところが「二乗して−1になる数」を考えると、実数の中には答えがない。

そこで数学は、その答えに新しい記号を与えた。それが虚数単位iである。定義はたった一行、i² = −1。この一個の約束から、新しい数の世界がひらける。

aとbを実数として、z = a + biと書ける数を複素数(complex number)と呼ぶ。aが実数部分、biが虚数部分だ。実数はb = 0の特別な場合にすぎない。つまり、私たちが慣れ親しんだ実数Rは、より広い複素数Cの一部なのである。

「想像上(imaginary)」だが、「架空」ではない

「虚数」「imaginary」という名前は、歴史的な手違いに近い。一六世紀、三次方程式を解く途中で、どうしても「負の数の平方根」が現れてしまった。当時の数学者はこれを「ありえない数」「想像上の数」と呼んで持て余した。命名には、この戸惑いがそのまま残っている。

だが後に、GaussやEulerによって、複素数は平面上の点として描けることが分かる(複素平面)。虚数は、実数とまったく対等な数学的実在になった。今日では電気工学・量子力学・信号処理など、現実を扱う最前線で虚数は欠かせない。

量子力学の波動関数は複素数値をとる。虚数は「役に立たない想像」どころか、現実を記述するために手放せない道具なのだ。要するに──虚数はimaginary(想像上)だが、fictional(架空)ではない。

実数は、複素数の「実部」にすぎない~実数主義~

ここに、数学が見せてくれる大事な構図がある。実数Rだけでは、「二乗して−1になる数」のような問いに答えられない。体系が閉じないのだ。そこで数学は、実数を貶めることも、空席を放っておくこともしなかった。実数Rと直交する新しい一本の軸iを、最小限だけ増設した。すると、体系はきれいに閉じる。

iはRの外にあるが、架空ではない。Rと結びついて、はじめて数の世界を完備にする。実数とは、この広い複素平面の、横軸という一部分だったのである。

ここから哲学へ──「測れる世界」も実部にすぎないのでは

拡張虚数理論は、この数学の構図を、世界の見方のモデルとして借りる。私たちはふだん、数値で測れるもの・記述できるものだけを「現実」とみなしがちだ。だが、どれほど精密に記述しても、対象には必ず、まだ意味として立ち上がっていない余剰が残る。

記述が捉えられるのは、すでに形になった結果だけ。その形が立ち上がってくる手前そのものは、どんな数値にも書き込まれない。

この構図は、実数だけでは閉じなかった数の体系とそっくりだ。そこで拡張虚数理論は、対象の存在Zを、記述され尽くす実次元Dと、その手前にとどまる虚次元iDの重ね合わせとして書く。

Z = D + iD

数学でiがRに直交する一軸であったように、iDはDに還元されない独立な一軸である。「測れる現実」は、より広い実在の実部にすぎない。だがそのiDを認めず、Dだけでこの世を定義し扱い続けることを実数主義と呼ぶ。

虚数で世界を見るということ

虚数を学んだとき、世界に新しい次元が一本加わる。マイナスの平方根という「ありえないもの」を切り捨てず、軸を一本増やして受けとめる。その瞬間、解けなかった問いが解け、直線が平面へと広がる。

同じことを、現実の見方に対しても行えないか──。測れないものを「気のせい」として捨てる前に、そこに実在の別の軸があるのではないかと問うてみる。

視座プラスが「構造視力」と呼ぶのは、この一本の軸を見る力のことである。

実数主義は誤っているのではなく、狭いのである。

実数が複素数の実部にすぎないように、数値で描かれた現実もまた、より広い実在の実部にすぎない。虚数は、その「広さ」を最初に教えてくれる、いちばん身近な入口なのだ。

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村主 悠真
WRITTEN BY
村主 悠真
思想家。ï Theory 創始者。人と世界の存在構造を、虚数概念の援用により拡張した独自の理論体系を構築。目に見える現実(実次元)の背後にある"虚次元"を定式化し、個人の変容から世界構造の転換までを一貫して扱う思想を展開する。教育・人道支援・平和構築を横断する世界的実践と、その根底にある理論を、このメディアで記録していく。
村主 悠真
村主 悠真
思想家 ── ï Theory 創始者
人と世界の存在構造を拡張する理論を構築し、思想と平和の実装を記録するメディアを主宰。

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