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虚次元対談

虚次元レオナルド・ダ・ヴィンチ × 虚次元村主悠真『飛ぶ機械について』【対談企画 第二話 後編】 想像力という、もう一つの翼

公開日: 2026年6月13日 更新日: 2026年6月14日
虚次元村主悠真 × 虚次元レオナルド・ダ・ヴィンチ『飛ぶ機械について』【対談企画 第二話 後編】 想像力という、もう一つの翼

二度目の来訪だった。前回の別れ際、レオナルド・ダ・ヴィンチは「次は飛ぶ機械の話をしよう」と言った。村主はその一言を、ポケットに畳んで持ち帰っていた。

外は雨。アンボワーズの石畳が灰色に濡れている。クロ・リュセの工房の窓は、雨音を柔らかく遮っていた。机の上には、前回はなかったものが広げられている。鳥の翼の解剖、気流の素描、そして──人間が翼を背負った装置の設計図。レオナルドは、窓の外を見ていた。村主が入ってきても、しばらくは振り返らなかった。

前編はこちら

第三幕 ── 想像力は、翼の設計図である

Leonardo  ところでユウマ。君は、想像力というものをどう見ているかね。私は生涯、想像力こそが自分の道具だと思ってきた。だが、それを他人に説明する言葉は、ついに持てなかった。

村主  ……僕にとって、想像力は、虚次元の側から実次元に届く「設計図」のことです。まだ存在していないものの、先に形だけが降りてくる。マエストロが紙の上に描いた翼の素描は、まさにその一例だと思います。

Leonardo  設計図、か。

村主  はい。想像力は、自由な妄想ではなく、まだ見えないもののかたちを先に受け取る、受信機のようなものだと僕は思っています。受け取った時点ではまだ飛べない。けれど、受け取った人間が紙に描き残して実次元化しておけば、いつか、どこかで、誰かがそれを飛ばします。

Leonardo  君自身も、そういう設計図を、いくつも描いているのかね。

村主  描いている、と思います。今はまだ飛ばないものも、たくさんあります。たくさんの失敗も積み重ねてきてしまいました。世界中の孤児を一つの家族のように扱うネットワークも、人身売買を経済の仕組みそのものから終わらせる設計も、水を誰もが同じように受け取れる仕組みも。──今の時代の D の側から見れば、どれも少し早すぎるように映っているはずです。

Leonardo  それでも描くのは、なぜだね。

村主  今無理にでも描いておかないと、次の時代が受け取れないからです。マエストロが六十年間、飛ばない翼を、それでも描き続けてくださったように。

第四幕 ── 飛ばない日のために

── レオナルド、長い沈黙。やがて、ごく静かに笑う。 ──

Leonardo  ユウマ。私はね、若い頃、飛ばない日のことを「無駄な一日」だと思っていたんだ。翼を描いても、飛ばなければ何の意味もない、と。だが晩年になって、少し考えが変わった。飛ばない日があるから、翼の線が少しずつ整ってゆくんだ、と。飛ばないことそのものに、意味があったんだ、と。

村主  それは、まさに今の僕に必要なありがたいお言葉です。

Leonardo  君も、飛ばない日が多いかね。

村主  多いです。僕の描くものの大半は、今の世界の側では、まだ意味を持っていません。読まれない文章、届かない言葉、掴めない概念、言語化できない微熱。特に今の時代は、目先の瞬間的な成果が重要視されてしまうんです。──でも、マエストロの話を伺って、少し安心しました。飛ばない日は、翼を整える日でもあるんですね。

Leonardo  そうだよ。それから、もう一つ付け加えさせてくれ。──飛ばない日は、自分のためにあるのではない。四百年後の誰かのためにあるんだ。

── 村主、深く頷く。 ──

エピローグ ── 雨が上がる

いつの間にか、外の雨音が弱くなっていた。レオナルドは机の上の一枚の素描──翼を広げた機械の図──を、丸めずにそっと村主の方に差し出した。「これは君に預けておこう。この素描の主は、たぶん私ではなく、まだ生まれていない誰かだから」。

村主はしばらく、その紙を見つめた。やがて丁寧に両手で受け取り、胸の前に抱いた。窓の外、アンボワーズの石畳が、薄い光を返し始めていた。

「また来たまえ、ユウマ。次は、水の話をしよう」。

── 編集後記

この対談は、もちろん架空である。

飛ばなかった翼の話は、飛んだ翼の話よりも長く残る。レオナルド・ダ・ヴィンチの六十年は、ライト兄弟の十二秒より、ずっと長い時間、人類を飛ばせていた。

想像力は、翼の設計図である。

構成・文・編集 ── 村主

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村主 悠真
WRITTEN BY
村主 悠真
思想家。ï Theory 創始者。人と世界の存在構造を、虚数概念の援用により拡張した独自の理論体系を構築。目に見える現実(実次元)の背後にある"虚次元"を定式化し、個人の変容から世界構造の転換までを一貫して扱う思想を展開する。教育・人道支援・平和構築を横断する世界的実践と、その根底にある理論を、このメディアで記録していく。
村主 悠真
村主 悠真
思想家 ── ï Theory 創始者
人と世界の存在構造を拡張する理論を構築し、思想と平和の実装を記録するメディアを主宰。

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