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虚次元対談

虚次元レオナルド・ダ・ヴィンチ × 虚次元村主悠真『飛ぶ機械について』【対談企画 第二話 前編】 想像力という、もう一つの翼

公開日: 2026年6月10日 更新日: 2026年6月14日
虚次元村主悠真 × 虚次元レオナルド・ダ・ヴィンチ『飛ぶ機械について』【対談企画 第二話 前編】 想像力という、もう一つの翼

二度目の来訪だった。前回の別れ際、レオナルド・ダ・ヴィンチは「次は飛ぶ機械の話をしよう」と言った。村主はその一言を、ポケットに畳んで持ち帰っていた。

外は雨。アンボワーズの石畳が灰色に濡れている。クロ・リュセの工房の窓は、雨音を柔らかく遮っていた。机の上には、前回はなかったものが広げられている。鳥の翼の解剖、気流の素描、そして──人間が翼を背負った装置の設計図。レオナルドは、窓の外を見ていた。村主が入ってきても、しばらくは振り返らなかった。

第一幕 ── 約束の雨

Leonardo  来たか、ユウマ。

村主  マエストロ。お約束のとおり、伺いました。

Leonardo  雨の日を選んでしまったな。だが雨の日は、飛ぶ機械の話をするのにちょうどいい。飛べない日の話だからだ。

村主  ……飛べない日の話。

Leonardo  私はね、ユウマ。生涯のうち六十年、飛ぶ機械のことを考えていたよ。十代で初めて鳥を見上げてから、この机にたどり着くまで。ほとんどの日は、失敗の日だった。

村主  設計図は、たくさん残っていらっしゃいますね。僕の時代の美術館にも、マエストロの飛行機械の素描は幾つも収められています。

Leonardo  残した、というより、捨てられなかっただけだ。うまくいかなかった設計図ほど、捨てられないものはないよ。──ユウマ。正直に言うとね、私の飛ぶ機械は、どれも、飛ばなかった。

村主  ……どれも。

Leonardo  どれもだ。理由は、今なら少しは分かる。人間の筋肉は、自分の体重を空中に持ち上げるには、あまりに弱い。翼を羽ばたかせる力が、そもそも足りなかった。──当時の私は、それを認めるのが嫌で、翼の形や関節の仕組みばかり、何度も描き直していた。

第二幕 ── 失敗という言葉について

村主  マエストロ。一つだけ、伺っていいですか。

Leonardo  なんだね。

村主  その素描は、本当に失敗ですか。

── レオナルド、顔を上げる。 ──

Leonardo  ……どういう意味かね。

村主  僕の時代から見ると、マエストロの飛行機械の設計図が描かれてから、四百年ほど経って、人間は本当に空を飛ぶようになりました。アメリカのライト兄弟という二人の青年が、機械で飛んだ最初の人間とされています。彼らは、マエストロの設計図を直接使ったわけではありません。けれど、あの素描が世に残っていなかったら、人類が「人間が空を飛ぶ」ということを本気で考え続けられたかどうか、僕には分かりません。

Leonardo  ……四百年。

村主  はい。マエストロの素描は、飛ばなかったのではなく、四百年かけて飛んだのではないでしょうか?

Leonardo  ……ユウマ。それは、慰めとしては少し大きすぎるな。

村主  慰めではありません。前回の理論の続きです。

Leonardo  ほう。

村主  前回お話しした僕の拡張虚数理論の基盤となる方程式 Z = D + iD の式ですが、iD の側には、「まだ実次元に降りてきていない可能性」が住んでいます。マエストロの飛行機械は、当時の 実次元D の側には降りてこなかった。筋肉の力が足りず、材料の強度も足りず、エンジンという概念もなかったからです。ですが、虚次元iD の側には、確かに「人間が空を飛ぶ」という座標が立っていました。マエストロはその座標に、誰よりも早く触れていた。四百年後に実次元 D の側がようやく追いついた、というだけのことだと思うんです。

Leonardo  ……つまり、時代のほうが追いついていなかった、と。

村主  はい。失敗していたのは、設計図ではなく、時代のほうです。

── レオナルド、机の上の素描を、指でそっと撫でる。 ──

Leonardo  ……ユウマ。その言葉は、私の死後五百年、ずっと待っていた言葉かもしれないね。

レオナルド・ダ・ヴィンチとの虚次元対談後編はこちら

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村主 悠真
WRITTEN BY
村主 悠真
思想家。ï Theory 創始者。人と世界の存在構造を、虚数概念の援用により拡張した独自の理論体系を構築。目に見える現実(実次元)の背後にある"虚次元"を定式化し、個人の変容から世界構造の転換までを一貫して扱う思想を展開する。教育・人道支援・平和構築を横断する世界的実践と、その根底にある理論を、このメディアで記録していく。
村主 悠真
村主 悠真
思想家 ── ï Theory 創始者
人と世界の存在構造を拡張する理論を構築し、思想と平和の実装を記録するメディアを主宰。

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