Is "Time Does Not Exist" True? Rovelli's Erased Time and the Unvanished "Now"
- 消えていく時間 ── ロヴェッリの三つの論証
- 時間は消えたのではなく、引っ越した
- 「いま」の重なりと、虚時間という補助軸
- 一本の線という思い込みの終わり
- “Law of Attraction” Can Be Scientifically Explained – The Story of Two Independent Variables: “Resolution” and "Sense of Presence"
- Is "Time Does Not Exist" True? Rovelli's Erased Time and the Unvanished "Now"
- What is the Law of Success? — "Humans do not live by a single function alone": The perspective of multiplying multiple types
消えていく時間 ── ロヴェッリの三つの論証
「時間は、存在しない」──。
こんな挑発的なタイトルの本が、世界的ベストセラーになった。著者はカルロ・ロヴェッリ。ループ量子重力理論を主導する、正真正銘の理論物理学者だ。
本書の前半で、ロヴェッリは私たちの時間のイメージを一枚ずつ剥がしていく。
第一に、時間は場所によって速さが違う。山の上と平地では時計の進みが異なり、これは現代の精密時計で実測できる。宇宙のどこでも一様に流れる絶対時間は存在しない。
第二に、宇宙全体に共通する「現在」は存在しない。遠い星にいる相手と「今」を共有することは物理的にできない。「現在」は私たちの近傍でだけ通用するローカルな概念だ。
第三に、基礎方程式に時間の向きはない。物理の基本法則は過去と未来を区別しない。「時間の矢」は基本法則からではなく、エントロピー増大という統計的事情から現れる。
こうして、世界の最も深い記述から時間変数tが消える。これが「時間は存在しない」の意味だ。
時間は消えたのではなく、引っ越した
しかし、この本には後半がある。
物理学から時間を消し去ったロヴェッリが、最終部で向き合うのは正反対の問いだ。時間が存在しないのなら、なぜ私たちはこれほど鮮明に時間を生きているのか。
ロヴェッリの答えは、記憶と予測にある。脳が過去の痕跡を保持し、未来を先取りする。その働きの中で「時間」が立ち上がる──時間は宇宙の側にではなく、視点をもつ私たちの側に生じる、と。
ここで、注意深い読者は気づくはずだ。
これは時間の消去ではない。時間の引っ越しである。
宇宙の基礎方程式から追い出された時間は、消滅したのではなく、「経験の構造」という別の場所へ住所を移した。そしてロヴェッリは、その引っ越し先の内部構造──記憶と予測が重なり合う「いま」がどういう形をしているのか──までは、立ち入っていない。
「いま」の重なりと、虚時間という補助軸
その「いま」を観察すると、三つの位相が共存している。
いま起こりつつあることに、過ぎ去ったばかりのことがまだ重なっており(記憶の働き)、来たるべきことがすでに食い込んでいる(予測の働き)。メロディが旋律として聴こえるのは、この重なりがあるからだ。各瞬間に一つの音しかないなら、聴こえるのは孤立した点の連続的な列であって、旋律ではない。
重要なのは、この位相の共存が、時間軸tの上には位置づけられないことだ。t軸の上では過去・現在・未来は別々の位置に散らばる。それらが「一つのいま」で重なるという事態は、tの前後関係をどれだけ細かく刻んでも出てこない。
村主の第五論文『虚時間』は、ここから一つの帰結を導く。閉じない記述には、補完する軸を最小限だけ加える。時間の十全な記述は、実時間軸tとそれに直交する虚時間軸itの合成、T = t + itとして与えられる。
ロヴェッリが物理学から消してみせた時間tと、経験の側に残った「いま」の層構造。二つは矛盾するのではなく、二次元の時間構造の、別々の成分だったと整理できる。
一本の線という思い込みの終わり
冒頭の問いに答えよう。
「宇宙のどこでも一様に流れる一次元の時間」は、存在しない。ここはロヴェッリの言うとおりであり、現代物理学の到達点だ。
だがそれは、時間について語ることの終わりではない。一次元の時間tが世界の根本記述でなかったのなら、私たちが現に生きているこの時間──厚みをもち、伸び縮みし、位相が重なり合う時間──を記述する語彙が、あらためて要る。
『時間は存在しない』が壊したのは、時間そのものではない。
時間は一本の線だ、という単純化された人類共通の思い込みである。更にその先を知りたい方は是非。
↓Yuma Murakami's Fifth Paper "Imaginary Time - Non-closure of Description and the Principle of Minimal Extension" is here↓

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