AIが生態系を壊している今、どこに立つか──空白は、順番に生まれている
「なくなる職業」の一覧は、役に立たない
職業名は、仕事の中身を粗く束ねたラベルにすぎない。実際に消えるのは職業ではなく、その中の特定の工程だ。
工程単位で見ないかぎり、自分が安全なのか危ないのかも、どこが空くのかも見えてこない。
しかも一覧は、消える側しか書かない。事業を作る立場で必要なのは、消えたあとに何が要るかという情報のほうだ。
壊れているのは、職業ではなく生態系
一つの工程が消えると、その工程を前提に成り立っていた周辺が連鎖して崩れる。仲介が消えれば、仲介向けの営業も、仲介を教える教育も、その業界誌も同時に足場を失う。
AIが壊しているのは、この連鎖の土台のほうなので、当事者でも気づきにくい。自分の仕事は残っているのに、周辺から静かに需要が溶けていく。
空白は、順番に生まれる
崩れる順序には規則がある。
まず、情報の非対称だけで食べていた媒介層。次に、定型的な生産と処理。そのあとに、標準化された判断。
逆に最後まで残るのは、責任を引き受ける仕事、身体を伴う仕事、そして信頼の蓄積が必要な仕事だ。順序が分かれば、どこがいつ狙われるかも読める。
内側で耐えるか、空いた場所に先に立つか
崩れている産業の内側で改善を続けるのは、急勾配を登り続ける行為に近い。労力の割に、地面そのものが下がっていく。
一方、空白に先に立つのは、まだ誰の縄張りでもない場所に事業を置く行為だ。難しいのは、空くと分かっている場所を、空く前に信じてその空白に向かって走れるかどうかにある。
空白に置くべき事業の形
空いた場所で成立するのは、AIが出した結果と現実のあいだに残る摩擦を引き受ける事業だ。導入の設計、責任の所在、既存の慣習との接続、そして人が納得する形への翻訳。
これらはAIが最も苦手とする領域であり、同時にAIの普及が進むほど需要が増える。
もう一つは、AIによって単価が崩れた領域を、量と速度で束ね直す事業だ。一件では成立しなくても、まとめて引き受ければ成立する。
早すぎる者と、ちょうどいい者
空白に立つのが早すぎると、市場が形成させる前に資金が尽きる。相場と同じで、いつ手を入れるかが結果を決める。そのためにも思考を未来に移し、その臨場感を感じる意識を高めたい。
特定の領域の生態系が壊れるとき、いちばん危ないのは、崩れかけた足場をまだ地面だと思っていることだ。その上で何も知らずに踊り続けることをいかに避けるかが、このAI時代の大きな能力の一つになる。
さらに深く知りたい方へ
「今すぐ役に立つこと」ばかりやる人ほど、価値が上がらないジレンマ
↓ë.Capital 講演アーカイブ|詳細はこちら↓

↓関連記事はこちら↓
↓最新記事はこちら↓
-
世界平和を願う人ではなく、実装する実践者を増やす──祈りと実装のあいだにあるもの
願いは、総量が増えても構造を変えない 平和を願う人が倍になっても、資源の配分は変わらない。願いは個人の内側で完…
-
アフガニスタン滞在記初日~ホテルと食と安全と~
アフガニスタンに来てます。 日本的には禁止渡航区域にいまだに設定されているので、なかなかハードルが高いんですが…
-
AIが生態系を壊している今、どこに立つか──空白は、順番に生まれている
「なくなる職業」の一覧は、役に立たない 職業名は、仕事の中身を粗く束ねたラベルにすぎない。実際に消えるのは職業…


