「守るものがあるから動けない」という嘘。──現状維持という名の自己欺瞞について
「家族がいるから」「仕事があるから」「今の環境を壊したくないから」。挑戦できない理由、変われない理由を、人はよく守るもののせいにする。
ただ、これは余り触れられることのない見解かもしれないが、「守るものがあるから動けない」の大半は、嘘だ。正確に言うと、嘘ではないが本当の理由ではない。
変わりたいのに変われない自分を、道徳的に正しい風味でコーティングしているだけのことが、ほとんどだ。
- 「守るもの」は、いつから言い訳になったのか
- 本当に守っている人は、その話をあまりしない
- 「守るもの」に実は一番「守られている」
- 怖さを「責任感」に翻訳した瞬間、人は一生動けなくなる
- 「守るもの」を言い訳にする人が、本当に恐れているもの
- 名付け直した瞬間、恐怖は見えなくなる──そして一生縛り続ける
- 「守るもの」を本当に守りたいなら、動く側にまわる
- 変わらないことは守ることではない──それはただ、今の自分を守っているだけだ
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- 自分を変えたいのに「挑戦が怖い」本当の意味は──視座が広がるという現象について
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「守るもの」は、いつから言い訳になったのか
本当に守っている人は、その話をあまりしない
守るものがあるのは、素晴らしいことだ。家族、仕事、信頼、積み上げてきた生活。これらを大事に思う感覚を、否定するつもりはまったくない。
ただ、観察していて思うのは、本当に守っている人は、その話をあまりしないということだ。黙って、守っている。守るために、必要なら動く。守るために、動かないほうがいいなら動かない。その判断は、淡々としている。
一方、「守るものがあるから動けない」と何度も口にする人は、本当は守っていない。守っているのは、守るものではなく、『今の自分のままでいられる状態』のほうだ。
「守るもの」に実は一番「守られている」
怖さを「責任感」に翻訳した瞬間、人は一生動けなくなる
現状維持は、楽だ。失敗しない。恥をかかない。評価が下がらない。今の人間関係が壊れない。
だから人は、現状維持を選ぶ。それ自体は悪いことじゃない。問題は、その選択に別の名前をつけてしまうことだ。
「守るもののため」「家族のため」「今はタイミングじゃないから」「もう少し準備ができてから」──これらの言葉が指し示す真意は、今の自分が壊れるのが怖い、という一点だ。
怖いなら、怖いでいい。でも、怖さを「責任感」に翻訳してしまった瞬間、現実に目を背けることになるので、現状を正確に捉えられなくなる。その結果、人は動けなくなる。動く必要がなくなる。
人によってはそれが怖さじゃなくて、本当は「守られたい」という「弱さ」かもしれない。だがその弱さを責任感に転嫁することで、疑似的な強い自分が完成する。その自我が見つめる歪んだ世界は、美しくも儚い虚構の足場の上に成立してしまう。
これが、自己欺瞞という現状維持の本当の構造だ。
「守るもの」を言い訳にする人が、本当に恐れているもの
名付け直した瞬間、恐怖は見えなくなる──そして一生縛り続ける
変わりたいのに変われない。挑戦したいのに踏み出せない。
そういう人が本当に恐れているのは、失敗でも、家族の困窮でも、収入の減少でもない。
今の自分の定義が壊れることだ。
今の肩書き、今の人間関係、今の評価、今の「こういう人」という自己像。この安定構造に亀裂が入るのを、人はいちばん恐れる。そして、その恐怖を直視するのは辛いから、「守るもののため」と名付け直す。名付け直した瞬間、その恐怖は見えなくなる。見えなくなった恐怖は、一生その人を縛り続ける。
自己欺瞞の恐ろしさは、自分に嘘をついている自覚がないことにある。
「守るもの」を本当に守りたいなら、動く側にまわる
変わらないことは守ることではない──それはただ、今の自分を守っているだけだ
ここまで読んで、苦しい気持ちになった人も多いと思う。耳心地の良いことを言ってても仕方がないので、最後にひとつだけ。
守るものを、本当に守りたいなら、まずはその自分の感情の起因から目を背けず、正確に認識したい。場合によっては今すぐ動くべきかもしれないし、改めて不動を貫くことを再確認するかもしれない。
いずれにせよ、人が変わらずにいられる時間は、思っているほど長くない。
宇宙も、世界も、環境も、経済も、身体も、関係性も、勝手に動いていく。動かない自分だけが、動く世界に置いていかれる感覚になる人もいるだろう。
「守るもののため」という言葉を、思考から外してみる。そのとき残る、震えるほどの恐怖。むきだしの弱さ。そこに、動けなかった本当の理由がある。まずはそこに向き合うという挑戦から始めてるのも良いのかもしれない。
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