no. 097
Ⅴ. 認知・思考操作 哲学・思想 意識・認知

自分に潜る ( じぶん-に-もぐる)

Diving into the Self

自己に向き合う内観の営みを、海面から深海への潜降として定式化した概念。
人間の意識の表層——日常・他者・社会・言語が常に攪拌されている層——は、海面のように絶えず波立っている。
一方、その下層には、攪拌の届かない静謐な領域が存在する。
自分に潜るとは、表層の波から距離をとり、その静謐な層へ垂直に降りていく行為を指す。
ただし潜降には常に三つの抵抗が伴う。
第一に暗さへの恐怖——降りるほど光が届かなくなり、何が待っているかが見えない。
第二に息が続くかという不安——日常への帰還が保証されているか分からない、戻れなくなるのではという不安。
第三に水圧への怯え——深度が増すほど自己の輪郭にかかる圧が増大し、構造が壊れるのではという恐れ。
これらの抵抗を引き受けてなお降りていくこと、そこに「潜る」という語の中核がある。
表層の波がどれほど荒れていても、深度を取れば必ず静かな層に到達できる——この構造への信頼が、潜るという行為を可能にする。